世界のオーガニックコスメ認証基準の現状 その2

世界のオーガニックコスメ認証基準の現状 その2
~消費者に信頼されるオーガニックコスメ認証基準とは~

【世界のコスメ認証団体の基準の相違点】

 現在、世界の各認証団体のコスメ基準は世界的な統一ベースがありませんが、それではどのような点で基準が異なっているのかを見ていきたいと思います。
ここでは、比較的よく知られた以下の認証団体について基準を比較していきます。




■USDAオーガニック(アメリカ)





■エコサート(フランス)







■コスメビオ(フランス)






■英国士土壌協会(イギリス)







■イチェア(イタリア)








■BDIH(ドイツ)








■ネイトゥルー(ベルギー)








■デメター(ドイツ)








■ACO(オーストラリア)







 このうちエコサート(フランス)、コスメビオ(フランス)、英国土壌協会(イギリス)、イチェア(イタリア)、BDIH(ドイツ)の5認証団体は、長くばらばらであったコスメ認証基準を統一しようという目的を持って、2010年にコスメの認証団体「コスモス」を、設立しています。

コスモスは、2010年に設立。EUで有名な五つの認証団体が設立メンバーになった。

【認証基準における石油系成分の使用の有無】

 各認証団体のコスメ認証基準の違いにおいて、もっとも重要なポイントは、石油系合成成分の使用について認めるか認めないかです。

 つまり石油系合成成分の一部を認めるコスメ認証基準と、一切、認めていないコスメ認証基準があります。石油系合成成分の一部を認めるコスメ認証基準を定めているのは、「コスモス(エコサート、コスメビオ、英国土壌協会、イチェア、BDIHの5認証団体」、そして「ネイトゥルー」です。
それに対して石油系合成成分を認めないコスメ認証基準を定めてるのは、アメリカの「USDA オーガニック」、ドイツの「デメター」です。


 すなわち「UDSAオーガニック」および「デメター」は、「コスモス」及び「ネイトゥルー」よりも厳しいコスメ基準を定めています。
またオーストラリアの「AKO」ですが、こちらは従来、石油系合成成分を認めないコスメ認証基準を定めてきましたが、2013年に新たに「コスモス」のメンバーに加わり、「コスモス」基準に従うようになった結果、石油合成成分の一部を認めるコスメ基準に変わりました。

世界のコスメ認証基準は統一されていなく、団体によって基準が異なる現状がある。

「経皮毒」の不安があるコスメには、食品と同様の安全性が求められる



石油系合成成分の使用を認めているコスメ認証基準については、消費者からは次のような疑問が出てくることでしょう。
「有機農産物や有機加工食品の基準では、石油系合成成分の農薬や食品添加物の使用が、一切認められていないのに、なぜオーガニックコスメの基準となると、石油系合成成分の使用が認められるのか」というものです。それはきわめて当然な、シンプルな疑問といえます。

「経皮毒」にもなる化粧品成分は、食べ物と同じ水準の安全性が求められる。

ともすれば、化粧品は、食品よりもいくぶん安全性が低くてもかまわないのではと考えられがちです。しかし「経皮毒」という言葉があるように、肌に塗った有害成分は、食品のように肝臓で分解されることなく、直接、血管に入ってしまうこととなり、かえって危険という報告も出されています。

こうした理由で、「化粧品は食品よりも緩やかな基準であってかまわない」という根拠ににはなりません。
体への影響ということを重視するならば、「IFOAM」の2009の見解である「オーガニック食品と同様のオーガニック食品と同様のオーガニックコスメ基準が望ましい」という言葉を真摯に受け止めるべきと、「日本オーガニックコスメ協会」は考えています。

ですから石油系合成成分の「不使用」という点では、「デメター」、「USDAオーガニック」は、消費者に大変わかりやすく、受け入れやすいコスメ認証基準といえます。

オーガニックコスメ認証マークがついていても、石油系の合成成分が使われていることもある。


【「コスモス」設立の経緯とその目的】



いくつもの認証団体が存在するヨーロッパでは、コスメ認証基準があまりにばらばらであれば「基準がないに等しい状況」となり、それはやはり好ましくないと各認証団体も考えるようになりました。その結果、ヨーロッパでコスメの統一基準を作ろうという動きが出てきたのです。

2010年、ベルギーのブリュッセルにおいて、ヨーロッパでは有名な5つの認証団体が参加して新たなコスメの認証団体「コスモス」を設立しました。
設立メンバーは、「BDIH」(ドイツ)、「コスメビオ」(フランス)と「エコサート」(フランス)、イチェア「イタリア」、「英国土壌協会」(英国)の5団体です。

この「コスモス」設立の最終的な目的として掲げられたのが、ナチュラル&オーガニックコスメのヨーロッパおよび世界統一基準を作ることでした。


【コスモス】は、何をベースにして基準を作ったのか?



 今、認証団体「コスモス」はコスメ世界統一基準を目指していますが、その基準において何故、石油系合成成分が「使用可」になったのでしょうか。

ここでは、コスメの認証基準がどのような経緯で作られたのか、その詳細をたどり、その基準が成立にいたる背景みていきます。
そこで着目したいのは、「コスモス」5団体のうち、どの団体が「コスモス」基準作りをリードしたのか
ということです。
そのような問いを投げかけたとき、それはやはり「コスモス」設立より10年前に、2001年に世界で初めてナチュラルコスメの基準を作ったドイツの「BDIH」だったのではないかとといことが浮かび上がってきます。

「BDIH」のナチュラルコスメ基準作りは、1996年にドイツの「BDIH」に加盟していた自然化粧品メーカー19社が参加して、ナチュラルコスメ基準についての討議することから始まりました。

それから5年間の討議が重ねられ、ようやくナチュラルコスメ基準が決まり、2001年から実地に至りました。
 留意したいことは、このナチュラルコスメ認証基準作りに参加したのは、コスメメーカーだけだったことです。
そのいくつかの例をあげれば、「Dr.ハウシュカ」、「ラヴェーラ」、「タウトロッフェン」、「ロゴナ」、「ヴェレダ」、「プリマベーラ」などです。
その後、「BDIH」のナチュラルコスメ基準は、世界のコスメ基準においてリーダー的な役割を果たすようになりました。


BDIH(ドイツ化粧品医薬品商工連盟)の会長を務めるヘラルド・デットマー氏。


いっぽう「コスモス」の五団体は、コスメメーカーではなく、認証団体であるわけですが、それぞれの特性を見ていくと、「エコサート」、「イチェア」、「英国土壌協会」は、もともと有機農産物と有機加工食品について、認証してきた団体です。

つまり「エコサート」、「イチェア」、「英国土壌協会」の三団体は、有機食品の認証基準についてはエキスパートと言えますが、化粧品の成分についてはエキスパートとは言いがたい団体と言っていいでしょう。
もうひとつのコスモス設立メンバーの「コスメビオ」は、比較的、新しく登場したコスメ専門の団体です。

そうしたメンバーの構成を見ると、「コスモス]のコスメ認証基準をリードしてきたのは、ナチュラルコスメ基準を世界に先駆けて提唱した「BDIH」だったことがうかがわれます。

この推察が妥当であることは、2001年に「BDIH」が定めたナチュラルコスメ基準において「使用可」とされた4種類の合成防腐剤が、現在の「コスモス」のコスメ基準においても「使用可」になっていることです。



          資料  2001年に「BDIH」が定めた4種類の合成防腐剤


   ●ソルビン酸とその塩             旧表示指定成分 : 合成防腐剤(石油)

   ●サリチル酸とその塩             旧表示指定成分 : 合成防腐剤(石油)

   ●安息香酸とその塩              旧表示指定成分 : 合成防腐剤(石油)

   ●ベンジルアルコール             旧表示指定成分 : 合成防腐剤(石油)



そのように、現在の「コスモス」基準は、「BDIH」のナチュラルコスメ基準のベースを踏襲したものであり、それを発展させたものであることは明らかです。

しかし「BDIH」が、2001年、世界最初にナチュラルコスメ認証基準作りをする際に、化粧品メーカーのみで討議したことが、いくつかの石油系合成成分を「使用可」とすることにつながったのではとも考えられます。

オーガニック認証コスメに、何故、石油系合成成分が使われているのか?




「日本オーガニックコスメ協会」は、「BDIH」が世界で初めてナチュラルコスメ基準を提唱したことはたいへん評価していますが、もしそのナチュラルコスメ基準作りにおいて、消費者側の代弁者も交えて討議していたら、もっと異なる基準になったのではないかと感じています。


「コスモス」を設立した認証団体がプレゼンした国際会議。石油系合成分の使用について質問が出た。



【コスメ統一認証基準におけるマーク表記方法について】

 2011年、「日本オーガニックコスメ協会」は、ソウルで開催されたオーガニック国際会議に参加しました。その際、「コスモス」認証団体は、五つの設立団体の統一基準の実地については、2015年1月からと発表していました。しかしその後、統一基準の実地は、2017年1月、つまり今年に延期されました。

そうした事情は、「コスモス」の認証マークの表記をどのようにするのかについて、なかなか5団体でまとまらなかったという状況があります。

結果的には、「コスモス」統一の認証マークを作ることはなく、五団体それぞれの認証マークをそのまま残し、その下に「コスモスオーガニック」または「コスモスナチュラル」という表記にすることが決定されました。
しかしこの表記は、同じ「コスモス」認証が、まったく違ったマークで表現されることになるため、消費者にはたいへんわかりにくいものになったという印象があります。




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世界のオーガニックコスメ認証基準の現状 その1